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同志社大学アメリカ研究所 部門研究

研究所では、常時、5〜9部門にわたり、研究所の特色を生かした活発な研究活動が行われています。これらの研究成果は、研究所が発行する定期刊行誌『同志社アメリカ研究』と『同志社アメリカ研究別冊』などで発表されるほか、単行本、シンポジウムやセミナーなどでも共有されています。
同志社大学アメリカ研究所部門研究(2021〜2023年度)
部門研究1
研究テーマ | 被抑圧者たちの抵抗と再生――アメリカにおける歴史記憶と文学表象 (Resistance and Regeneration of the Subjugated: Historiographical Memories and Literary Representations in America) |
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代表者 | 白川 恵子(文学部) |
概要 | 本研究の目的は、未遂に終わった2件の叛乱事件(ガブリエル・プロッサーの叛乱事件、1800年 およびデンマーク・ヴィージーの叛乱事件、1822年)につき、歴史的記録と文学的表象との接点を問い、奴隷制あるいは人種的抑圧への抵抗精神の多用な表象形態を探り、その文化的言説において新たな包括的知見を示すことを目的とする。その独自性、創造性は、以下の点にある。 ・建国時以降、矛盾に満ちた人種政策のひずみである奴隷叛乱を、具体的に列挙することによって、それぞれの叛乱、あるいは他の民衆暴動との共通点や特性を見定める。 ・同時代の近隣地域の叛乱の連鎖によって、何か何を触発したのか、その副産物として、いかなる表象形態が生じたのかを、俯瞰的視点からも、局地的視点からも考察する。 ・史実と虚構との言説上のゆらぎを肯定的に捉えて、両者のナラトロジーの理論的枠組みを探る。想像と虚構を含む小説が教育的・啓蒙的歴史説明の文書として極めて有効である点にも注目する。 ・事件・実例の背後に、歴史的記録と文学的創造と視覚表象の啓蒙性との学際的連動を見出し、展示物の物語性とその効果について考察する。 |
部門研究2
研究テーマ | 連邦最高裁判所とアメリカ社会 |
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代表者 | 松本 哲治(司法研究科) |
概要 | 本研究は、同志社大学アメリカ研究所の共同研究である、部門研究第2の一環として行われる。この部門研究は、研究代表・研究分担者を含め10名の同志社大学関係者と、同志社大学学外の10数名の連携研究者により行われる。アメリカ合衆国連邦最高裁判所の主要な判決を、法的側面からのみならず、その歴史的・社会的・経済的・政治的側面から分析・検討することで、その時々の時代において、最高裁判所の判決がどのような意義を持ったのかを明らかにするとともに、その時代において最高裁判所が判決を通じてどのような役割を果たしたのかを解明しようとする。各時代の最高裁判所の判決(そして最高裁判所それ自体)が、各時代のアメリカ社会において果たした役割を検討することで、最高裁判所が、アメリカ社会において果たしてきた役割の変化を明らかにしようとするものである。 |
部門研究3
研究テーマ | Historical Studies of the Transient Subjects/Unsettled Setters in Japan and North America from the Mid 19th Century to the 20th Century |
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代表者 | 和泉 真澄(グローバル地域文化学部) |
概要 | 本研究の目的は、19世紀後半から20世紀にかけての日本と北米の歴史を複眼的に視野に入れつつ、一定の場所にとどまらなかった人物や、一時期存在したがその後継続しなかったコミュニティなどの歴史的事例を集めることによって、これまで近代国民国を中心軸に据えた日本史、北米史では捉えきれなかったトランスパシフィック世界の人間の活動や生存戦略、繰り返される移動、国境を超えて想起される文化共同体や国内の敵として破壊されるコミュニティなどの歴史を動的に掘り起こすことである。 |
部門研究4
研究テーマ | クィア・フェミニスト映画文化の創造―女性映画祭に関する日米欧比較研究 |
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代表者 | 菅野 優香(グローバル・スタディーズ研究科) |
概要 | 本研究は、近代フェミニズム運動の中心となったフランス、イギリス、アメリカを中心に、女性映画祭という文化実践を通して、映画とフェミニズムの根源的な関係を歴史的な視点から解明しようとするものである。こうした歴史的な視点に加え、現在に至るまで女性映画祭が脈々と続いている地域を対象に、現代の女性映画祭の意義と変容についてトランスナショナルな協働と連帯のネットワークという共時的な視点からの解明を試みる。以上の観点から女性映画祭に関する総合的研究を遂行し、「トランスナショナルなクィア・女性映画文化」創造の可能性を追求する。そして、研究成果を国際シンポジウム、学会、論集を通じて国内外に発信するとともに、フェミニズム運動、クィア・コミュニティ、映画祭運営へと広く還元し、研究と実践を架橋するプラットフォームとなることを目指す。 |
部門研究5
研究テーマ | アメリカにおける政府による情報技術利用に対する有権者の受容と信頼 |
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代表者 | 飯田 健(法学部) |
概要 | 本研究の問いは、政府による情報技術の利用に対する有権者の支持が何によって決まるのかというものである。インターネット上での情報発信・収集や人工知能などの情報技術が人々の生活を豊かにすることは論を待たないが、そうした情報技術の政治への応用については政府による情報操作・監視という点で懸念が存在する。これまで先行研究では主として、利便性、使いやすさ、社会的圧力、スキルといった要因が一般的な意味での情報技術の利用を促すことが示されてきたが、それらは個人の情報技術利用を説明するものであり、政府による情報技術の政治的応用に対する有権者の受容を説明するものではない。また政治的応用には単なる情報技術に対する個人の認識やスキルだけではなく、それ固有の要因が作用する。 これに対し本研究の学術的重要性は従来の先行研究ではうまく説明できない、情報技術を用いた政府による選択的・非選択的情報発信、データの収集、人工知能を用いた国民の行動予測を、どのような有権者がどのような条件下で受け入れるのか明らかにすることにある。 これを達成するため本研究では、とりわけパンデミックや災害に対する政府対応など情報技術の有用性が発揮される問題についてのマスメディアのフレームのあり方に着目する。より具体的に、様々な社会的争点についての情報のフレーム(例えば政治的対立、公衆衛生、経済的影響)が、個人の属性(例えぱ年齢、性別、学歴、党派性)によってどのように、情報技術の政治的応用への態度に異なる影響を及ぼすか検討する。 |
部門研究6
研究テーマ | 国際秩序形成における日米中要因 |
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代表者 | 浅野 亮(法学研究科) |
概要 | 本研究は、アメリカが戦後寄与してきた国際機構・制度・枠組み(協定や同盟)、すなわち国際秩序が、日本や中国を内に取り込む中でどのように機能してきたか、もしくはどのように機能不全となっていったのかを明らかにする。そして近年米国の脱退や離脱が多々見られる中、日中はどのように働きかけているのか、各国アクターや国際世論などの多角的な視点から分析する。その上で、アメリカの外交史や外交政策研究に新たな分析視点を提供することを目指す。 |
部門研究7
研究テーマ | A Gender Analysis of “Post-Cold War“: US Military Presence and “Women, Peace and Security“ agenda in East Asia |
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代表者 | 秋林 こずえ(グローバル・スタディーズ研究科) |
概要 | The research project aims to examine conceptualization of "post-Cold War" from a gender perspective particularly when the notion is applied to describe the problem and the history of sexual violence by the US military and their allies in East Asia that has continued throughout the periods of Cold War and "post-Cold War" and to present day. More specifically, the research project interrogates what it means when the issue of sexual violence under long-term foreign military presence in East Asia is absent in the international politics of Women, Peace and Security Agenda that highlights "rape as a weapon of war." In doing so, the project conducts research on the host communities of US military in East Asia including Okinawa in Japan, Jeju and the US military camptowns in South Korea, Olongapo, a former location of US military in the Philippines to question the notion of "post-Cold War" as a demarcation of the end of active low-intensified warfare and the superpowers military stand-off, but rather, the notion as a force that has systematized sexual violence by reinforced militarism in coloniality. |